先生方、こんにちは。
今回は、「読むこと」の領域での指導で、評論文教材を使った遠隔授業作成の考え方についてみていきたいと思います。
古典教材(古文・漢文)は、読解の前提として習得すべき知識・技能がありますので、生徒にドリル的に課題を与えることも可能です。その解答も「読解」や「解釈」ではなく、確固たる答えがありますので、安心安全ですね。ある意味授業はやりやすいと思います。これは遠隔授業だけではなく、通常の授業も同じです。
さて、現代文はやっかいです。説明的な文章・文学的な文章、ともにやっかいです。
基本的に日本語話者として基礎的な日本語能力を有しているので(ツッコミはなしよ)、新規での語彙的な習得を含みながら、文章を読んで「書き手の意図を捉え」たり、「解釈」したり、「批評」したりしながら、「自分の考えを深め」ていくことが授業の大きな目的になります。
授業は「問い」に対する「答え」で構成されている、とお話ししました。
遠隔授業ではエッセンスしか残らない、ということもお話しました。
今回の目的は、遠隔授業では、どのように「問い」を立てて提示し、それに対しどのように「答え」ていくのがよいか、です。
前置きが長くなりました。
では、いきましょう。
1.単元デザイン
単元(ひとまとまりの学習範囲)を次のように設定してみました。
| 1.指導領域 | 読むこと |
| 2.育成したい資質・能力 | - 知識・技能・・・情報と情報の関係を理解する力
- 思考力・判断力・表現力・・・ 要旨を把握する力
|
| 3.教材 | 山崎正和『水の東西』 |
| 4.単元目標 | 対比項目の明確な文章を読み、筆者の主張について、情報と情報の関係の理解を手がかりに、把握する。 |
| 5.単元目標に迫る問い | 「日本人の感性の特徴は何か」 |
2~4コマ時間配当です。モデル教材としては山崎正和『水の東西』で行います。
本講をたたき台に、各学校の現状にあわせてカスタマイズしてください。
また、別教材にも応用してください。
テキストと格闘させるときに、「手段として情報と情報の関係に着目させる。最終的に筆者の主張を把握させる。」このふたつを、生徒自らの学習活動として取り組ませたいものです。
2.事前指導
(1)全体の流れの説明
第3講において、事前指導は「問いの提示」→「学習の見通しの説明」→「学習課題」の流れが作りやすいということをお話しました。
具体的な教材を用いてあてはめてみると、下表のようになります。
①問いの提示 ↓ | 「単元目標に迫る問い」を提示します。 その問いについて考え解決していこうとする学習過程の中で、単元目標の達成を図っていきます。
例えば次のように提示することも可能です。 「日本人の感性の特徴は何か」についてテキストをもとに考えることにより、対比項目を整理しながら、筆者の主張を把握する力をつけることがこの文章を読む目的です。
| 何について学ぶのか |
②学習の見通しの説明 ↓ | ワークシートがあるのか、教科書と手持ちのノートで進めるのか、動画を見ながら進めていくのかを説明します。 | 到達点はどこなのか |
| ③学習課題 | テキスト本文に基づいた具体的な学習活動を指示します。 | 何をするのか
|
授業動画作成のポイント
PowerPoint型であれ、書画カメラ型、画面録画型であれ、ライブ型であれ、説明する要素として
「何について学ぶのか」
「到達点はどこなのか」
「何をするのか」
があると、わかりやすいです。
(2)具体的な学習活動
今回はワークシートを配布することを想定していますが、画面に教科書本文を提示し該当箇所を示し、同じように指示することも可能です。
①問い
今回は大きな問いを一本立ててみました。
問 傍線部「『鹿おどし』は、日本人が水を鑑賞する行為の極致を現すしかけだといえる」のはなぜか。
教材のタイプや学習の進み具合によって設問の数など細かく設定可能ですが、今回は「育成したい資質・能力」と「教材」の関係から、設問数一本の場合を考えてみました。
この一文に傍線を引くことで、対比項目の読み分けや、対比項目同士の関係などを包括的に問うことが可能です。
評価の側面から言うと、この設問にきちんと答えられるということは、【知識・理解】としての「情報と情報の関係」や【思考力・判断力・表現力】としての「要旨を把握する力」がついたと判断できます。
事後指導では、この問いに対して、読みの手順を解説しながら、ひとつの解答を提示していくことになります。
ご存知のように、この問いは文章全体に関わる問いです。この問いに答えようとすると、文章全体を要約することが必要になります。その際、Aの項目とBの項目に着目し整理することになります。
この設問だけ提示し後は生徒の学習活動の時間にするか、それとも段階的な読み方の道筋を追いながら解答に導いていくかは、生徒の実態に即し計画してください。
動画作成のポイント
教材テキストの長さと設問数に応じて、画面に表示する情報量を調整するとよいでしょう。
②必要に応じて「段階的な読み」を用意
傍線部一本だけではなく、段階的な読みの支援が必要だと判断すれば、メインの問いにいくまえに部分読解で準備を整えておく必要があります。ここは丁寧に行きたいところですね。
傍線部の設問に答えるためには、本文全体を二つの項目で整理しながら、読み進めていく必要があります。その時、先生方の頭の中には下図のような読み分けがなされているのではないでしょうか。それをどのように生徒にも教えていけばいいのか。悩みどころですね。
単元目標にも「情報と情報の関係の理解」としてありますので、下図のようなワークシートで段階的な読みを学習させることも可能です。(ここはそれぞれ生徒の実態に応じ工夫する余地があります)
ここで「教科書本文抜き出し」レベルから「余計な部分を削ぎ落としたシンプルな文章」レベルにまで持って行くことができるワークシートだと、より設問に答えやすくなります。
ここまでの問いの提示について、動画作成ツール(PowerPointスライドを録音して動画とするか、PDFをiPad等に写し画面録画機能を使って動画とするか、書画カメラのように使って動画とするか)は最適なものを選択してください。(※第2講参照)
動画作成のポイント
動画の「編集(切り取り)」できる利点を生かし、テンポを重視したつくりにすると集中力が持続しやすい。
③注意!学習活動先行の計画だと着地しづらいぞ
「単元目標」や「単元目標に迫る問い」の設定があいまいだと、本教材におけるワークシートは、下図のようなものを作成しがちです。
「とりあえず二項対立の文章なので、対立項目ごとに分けさせて、視覚的に捉えさせよう」と、学習活動が先に来てしまいます。
そして、ワークシートを完成させるためには、意味段落の説明をする必要があるということで、下図のようにそれぞれ説明することになります。
「思考の『国語』」ではなく「説明の『国語』」ですね。
「単元を通して取り組むべき大きな問い」のない授業において、説明はどこに向かっているのでしょうか?
ワークシートのように上段と下段に分けさせるのは何のためでしょうか?
問いがないと、たやすく手段が目的化してしまいます。
特に遠隔授業では、「作業的なワークシート」は、のちのちの事後指導が大変厳しくなります。
「単元目標」や「単元目標に迫る問い」から考え下ろしていくことをおすすめします。
3.事後指導
(1)解答の方向性
解答の方向性としては、「日本人は、〜だから。」という理由説明型の記述内容になります。しかし、筆者は日本人の特質を述べる際に論の補強として対比項目を用いていますので、その部分もきちんと解答に盛り込まないと、論旨の把握には至りません。この部分で「評価」を段階的に分けることも可能ですね。
解答例としては、下記のようなものはいかがでしょうか。
西洋は空間に噴き上げ実際に目に見える水を好むが、対照的に日本人は形なきものを恐れず、時間とともに流れていく水を好むため、実際に目に見えなくても音の間隔だけで水の流れを実感し鑑賞することができるから。
(2)腑に落とす説明
①問いに対する答え
- 「段階的な読み」のようなワークシートは課題として課していませんが、説明するときはAの項目とBの項目について整理して説明する必要があります。
- その際、黒板を使って説明したほうが分かりやすいか、PowerPoint動画のほうが分かりやすいかは、適宜判断してください。
- ポイントは「問いに対する答え」につながるように対比項目を整理していくということです。今回は「水に対する感性の違い」を対象点にしてまとめることにより、「鹿おどしがなぜ極致のしかけといえるか」に対する答えにつながりやすくしています。
- 授業がうまい先生というのは、概してこの段階の説明がとても上手ですね。キーワード、キーセンテンスをおさえつつ、論旨を外さず、枝葉をそぎ落として見事に視覚的に構造化してみせます。
- 情報の量も適切で、しゃべる量と板書で文字情報として見せる量も、生徒の許容量を配慮して調整されています。
- 遠隔授業では全てを満たすことはなかなかできませんが、できる限り近づけていこうとすることはできると思います。
②段階的な読み
- 段階的に読みが深まるよう、ワークシート等で計画されていますので、「なぜその部分が抜き出せるのか」等を、順を追って説明していきましょう。
- 最終的な「答案」の形に仕上げていくときに、部分読解で積み上げたパーツを組み合わせる学習段階が想定されます。ここ、何気なく教師の側でまとめていますが、生徒にとってみれば不思議なんですね。「なぜ単純にくっつけたたけじゃだめなんだろう」「なぜこのような文章になるんだろう」と。
- 「文意を変えずちょこっと書き換える」。これ、ものすごい国語力が必要です。そして説明するのも骨が折れますが、なぜこれらの文章が、合体すると別の言葉で表現される文章になるのか、生徒たちはそこをわかりたがっています。
動画作成のポイント
文字情報を必要最小限に絞ったほうが伝わりやすくなります。
4.まとめ
- 「育成したい資質・能力」→「単元目標」→「単元目標に迫る問い」の順番で考える。
- 教材テキストの長さと設問数に応じて、画面に表示する情報量を調整する。
- 動画の「編集(切り取り)」できる利点を生かし、テンポを重視する。
- 文字情報を必要最小限に絞る。
今回は、動画作成の際の方法論と、教材をどのように扱うかという教材論のふたつの考え方を扱っています。
テーマは「評論文教材でどのように遠隔授業動画を作成すればよいか」ですので、方法論が主たる内容ですが、教材についても触れざるを得ませんでした。
論点が分散してしまい読みづらかった部分もあったかと思います。ご容赦ください。
現代文(評論)教材での授業動画作成のイメージが膨らめば幸いです。