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2020年8月24日月曜日

【キャリア教育6】ワークショップから具体的な「問い」を考える

 Ⅲ ワークショップ

研修の中でワークショップを実施しましたが、私の機器操作が下手くそすぎて、「ワークシート」作成結果を共有することができませんでした。すみません。

時間も20分と短く、十分に検討できなかったと思います。

ここでは、時間内に仕上がった教科のうちからひとつ取り上げて、考えていきたいと思います。

観点は「関連づいているか?」です。

3.1 保健体育科

キャリア教育の視点を組み込んだ指導目標心身ともに健康な実践と目標達成のための学習過程を通して、計画を実行できる力を育成する。
教科目標から捉えた「問い」社会生活における健康・安全とは何か。
運動や健康についての自他や社会の課題とは何か。
単元感染症の予防
単元目標1.感染症予防の原則を理解する。
2.個人的、社会的に予防できる方法を考える。
単元目標に迫る問いなぜ緊急事態宣言が発令されているのか?
学習活動思考ツール(イメージマップ)による状況分析→発令の理由を考える。

3.1.1 切り口がすばらしい

「問い」の作り方がとても秀逸です。「感染症の予防」の単元で、「1.感染症予防の原則を理解する。2.個人的、社会的に予防できる方法を考える。」という単元目標なら、単元目標に迫る問いにも「感染症」のキーワードを入れたくなります。例えば「なぜ感染症は起こるのか」など。

しかし、「なぜ感染症は起こるのか」という問いにすると、「○○ということで感染症が発生する」という「理屈」を学ぶことが単元の目標になり、広がりに乏しくなります。

保健体育科が考案した「なぜ緊急事態宣言が発令されているのか?」という問いは学習活動の多様性と、学びの広がりがあります。

「なぜ緊急事態宣言が発令されているのか?」という問いをもとに授業を展開していくと、下記の要素を考えることになります。別の言い方をしますと、問いにきちんと答えるためには、少なくとも下記のことを盛り込まなければなりません。

  1. 緊急事態宣言の定義
  2. 警戒レベルの段階
  3. これまでの感染症
  4. 新型コロナウイルスの特徴
  5. 緊急事態宣言を発令しなければならない理由

「緊急事態宣言」という今起こっている事象の理由を考えさせることで、必然的に「感染症予防の原則」と「個人的、社会的に予防できる方法を考える」ことにつながっていきます。

とてもよくできた「問い」だと思います。

3.1.2 キャリア教育の視点

上記「問い」で単元目標に十分に迫ることができるでしょう。これは「現状の理解」です。キャリア教育の視点は「これから」を含みこんでいます。

もう一度キャリア教育の視点を組み込んだ保健体育科の指導目標を見てみましょう。

「心身ともに健康な実践と目標達成のための学習過程を通して、計画を実行できる力を育成する。」

「計画を実行できる力」とは、「これから」の力です。「個人的、社会的に予防できる方法を考え」、その方法を実行するためには「何が必要か」。学習活動としては、ここまで考えさせたいものです。 

3.1.3 評価

評価はこれまで触れてきませんでしたが、ここで少しだけ触れておきたいと思います。

評価は「単元目標」に対してなされます。目標が十分達成できたか、というのが「評価」の見取りです。定期考査で点数が取れたかというのは一つの指標にすぎません。単元ごとに狙った学習目標に対してどれだけのパフォーマンスを発揮したかをきちんと評価することが、生徒たちの「やる気」につながります。また、先生方の授業の「チェック」にもなります。

単元目標は
1.感染症予防の原則を理解する。
2.個人的、社会的に予防できる方法を考える。
です。この目標に対して、どの程度到達できたか「見とる眼」を授業者は養わなければなりません。

まず「1.」ですが、感染症予防の原則をどの程度まで理解することが望ましいかを定義してください。それによって、ワークシートの作り方等が変わってきます。記述で確認するのか、選択肢法によって確認するのか、それとも発表という形式をとるのか、は生徒の学習段階に応じて選択してください。

記述での確認を例にとると、生徒が書いた記述の中に
・キーワードが入っているか。(←言葉の定義について確認する学習活動を行っている必要がる)

・具体例が入っているか。
・2文から3文構成になっているか。
等が評価の規準になります。

印象で採点してはいけません。

次に「2.」ですが、ここも記述の確認による評価を考えると、
・個人的にできる予防法が書かれているか。
・社会的にとるべき予防法が書かれているか。
など、書かれいてる項目に着目して評価していく必要があります。グループ討議の結果をもとにした評価も同様です。

3.1.4 まとめ

よい問いというのは、それに答えるためにいろいろ深堀りしていかなければならないもの。(一問一答ではない)

【キャリア教育5】取組の共通化と個別化

 Ⅱ 「取組の共通化と個別化」


2.1 提案3つ

ここで学校全体として共通して取り組むべきことと、教科科目ごと個別に取り組むことについて、3点提案します。


まず一つ目ですが、全ての授業で「単元目標の共有」「単元の見通しの共有」「学習の振り返り」を行う。学校全体として取り組むことで、 成果と課題を確認しやすくなります。

2点目は 各教科科目ごと個別の取り組みですが、学習活動を効果的なものとするために単元目標に迫る問いを工夫するということです。

3点目は、学習活動として「思考ツールを活用しながら表現活動共同学習を取り入れる」ということです。これは単元や単元目標に応じて検討することが必要になります。

2.2 思考ツールの活用場面

思考ツールの効果が発揮されるのは、情報の整理分析、つまり情報の処理過程の場面です。各教科科目によって思考ツールを活用するのに適切な単元があると思います。 問いとの関係によって使い分けてください。


2.3 研究授業でお互いの授業を参観し合うときの「授業を見る目」

最後に 互見授業の視点を提案します。

2.4 最後に

資質・能力の育成を目指した授業を行うことが、キャリア発達を促す授業となります。そして授業改善のカギは、目標と学習活動を活かすと「問い」です。 

先生方一人一人が、よい授業実践者となることを祈念しています。


【キャリア教育4】「問い」はどこからやってくるのか

 1.4 「問い」を考案するための方法

では、どうやって「問い」を作ればいいのでしょうか。

「問い」はどこからやってくるのでしょうか。

「問い」はなにもないところから自分勝手にどこからか生まれてくるわけではありません。

まったくのゼロから考えようとするから大変しんどいことになります。またそうする必要はありません。

ではどうするか。

1.4.1 単元目標と学習活動と問い

授業をデザインする時、私達の目の前にはまず「教科書教材」があります。頭の中には授業イメージが浮かびます。学習活動のアイディアが浮かびます。そして学習目標と照らし合わせます。「○○という力をつけさせたいなぁ」と。


この時に「学習活動」を「深い学び」に導くのが「問い」の質です。「問い」によって生徒の思考が刺激され学びに向かっていくのが理想です。

「問い」はどうすればいいのか。繰り返しになりますが、「問い」はなにもないところから自分勝手にどこからか生まれてくるわけではありません。まったくのゼロから考えようとするから大変しんどいことになります。

便利なものがあります。「学習指導要領」です。

学習指導要領の文言にインスピレーションを得て、単元の内容を結びつけ、考案していきます。ここが教材研究の「ヤマ」です。そして授業改善の本丸です。

1.4.2 学習指導要領の目標から「問い」のイメージを膨らませる

具体的に見ていきましょう。地歴科を取り上げます。


新学習指導要領の目標には上記のように記載されています。その中から「〜について理解する」や「〜について考察する」の「〜」の部分に着目します(赤字下線の部分)。この部分は教科の学習内容の「核」になる部分です。ここを疑問形にしてみると、教科として「問い」にすべきことが見えてきます。これを「教科目標から捉えた『問い』」とします

「教科目標から捉えた問い」を念頭に教科書教材を見てみると、単元目標に迫る「問い」が、少しずつ形をなしてくるのではないでしょうか。この「問い」の考案の秀逸さがそのまま教師力と比例してきます。

実際に単元に落とし込んだ例を見ていきましょう。


1.4.3 授業デザイン


上の三つの項目はこれまで確認してきたものです。

「キャリア教育の視点を組み込んだ指導目標」は、「課題を追究したり解決したりする活動を通して、想像する力を育成する。」としました。

「育成すべき資質能力」は、「課題対応能力(問題を発見できる力)」です。

そして「教科目標から捉えた問い」は、「事象相互の関連性からわかることは何か。」としました。

ここから単元目標と、単元目標に迫る問いと、学習活動を考えてみます。

単元目標は、「武士の土地支配と公武関係、東アジア諸国との関係、仏教の新たな動向などに着目し、中世国家の形成過程や社会の仕組みと文化的特色について考察させる」です。

この単元目標を達成するためには、効果的な学習活動が必要ですが、学習活動を「深い学び」に導いていくのは、「問い」の力です。

では、問いはどのようにしたか。
 単元目標に迫る問いは「武士が恐れていた勢力とは何か」と立ててみました。単元全体を通してこの問いについて考えることで、単元目標に迫ることができると考えます。

この問いを考えるための具体的な方法として学習活動を組み立てていきます。首里東高校では思考ツールによる学習活動を想定していますので、 「問い」 について整理したり、分析したり、統合したりする学習活動を計画することができます。 その考察結果をある程度の長さの文章でまとめるという学習活動を通して、キャリア教育の視点を組み込んだ指導目標である「想像する力を育成する」につなげることができます。 

キャリア教育の視点を組み込んだ指導目標の観点から見ていくと、課題は「武士が恐れていた勢力とは何か」であり、追求したり解決したりする活動は「シンキングツールによる状況分析や、考察結果をまとめる学習活動」であり、 その学習活動を通して「想像する力を育成する」という流れになります。

各教科の教科目標から捉えた問い(案)について 列記します。教科教育のプロとしてこの「問い」をみて、 単元ごとの「問い」が思い浮かんでくるのではないでしょうか。


1.4.4 各教科の「教科目標から捉えた『問い』」





















1.4.5 まとめ

まとめます。

学習指導要領の文言には「問い」のイメージが満載。


【キャリア教育3】指導目標を達成するためには何が必要か

1.3 指導目標を達成するためには何が必要か


指導目標の立て方を理解してもらったところで次に進んでいきたいと思います。

では具体的に指導目標を達成するためには何が必要かということについて考えていきたいと思います。

端的に言えば、指導目標を達成するためには授業の充実が必要ですが、では現在どのような授業が求められ、 どこに視点を当てて授業改善していくべきかについては、 改めて考えてみる必要があると思います。 

1.3.1 授業の基本構造

大きい前提からお話をします。授業の基本構造は問いに対する答えで構成されています。



問いのない授業は、教師の一方的な説明や作業指示が多く、生徒の学習活動も学びではなく作業である場合がほとんどです。生徒側から考えてみると、この授業は何を考える授業なのか、どのような力がつくためにやっている授業なのかということに敏感に反応します。大人だってそうです。今やっていることが意味があることなのかどうなのかということは大きな関心ごとです。 学ぶ内容は生徒自身にとって切実な課題や考える価値のある問題であるのが望ましいということは言うまでもありません。提示する問いによって、 生徒の興味関心を大きく引きつけることができれば 学習目標の達成に近づくことができます。 

教師の側から見ると、自分の教科の見方考え方を通し、何ができるようになるかということを念頭に学習目標を設定し、学習目標に迫る問いを設定します。簡単に問いを設定しますと書きましたが、これが一番重要で一番難しいことでもあります。この問いの設定については、後ほど詳述します。

学習目標の設定と問いの設定を受け、 適切「学習活動」を選択し組み立てていきます。 教師という業種の人々は実践知の高さゆえ、 授業を考える時どうしても生徒の活動に注意が行き、学習活動が先行してしまいます。つまり、この1時間何をさせるかということが大きな関心ごとになります。生徒を動かすということに優先的に目が行くため、教材・学習目標・「問い」に対して意味のある学習活動であるかということに対しては あまり自覚的ではない場合があります。

教材の特性や学習目標、問いに対し、表現活動の充実した学習活動がふさわしいか、生徒それぞれのアイデアを共有させる学習活動がふさわしいか、 また個別に探究させる学習活動がふさわしいかは、自ずと異なってきます。 

いつでもどこでもどのような教材でも、どのような学習目標でも、どのような問いでも、常に同じような学習活動というのは基本的にありえません。 

「答え」の部分については、学習の初めに提示した問いに対して正対したものになっているかどうかが重要です。 またここでは生徒がなるほどと言って腑に落ちるような説明であることが 大事です。ここは教師の指導技術の 核になる部分です。通常私たちが授業の上手い先生という時、この説明のうまさを指している場合がほとんどです。 

生徒の側に期待される効果としては、 一つの知識がメタ認知化され、 思考が深化していくことを通して、次の学びにつながっていきます。


1.3.2 「授業の基本構造」と「授業の中で活用させる資質能力」

この「授業の基本構造」に第1章で見た「授業の中で活用させる資質能力」を並べてみると下図のようになります。

「授業の中で活用させる資質能力」が「基本構造」のそれぞれ何に該当しているか見ていきたいと思います。首里東高校として生徒に身につけさせたい力が、授業の基本構造にどのように対応しているか改めて捉え直してみましょう。





1.3.2.1 単元の目標の共有

「目標を持たせているか、見通しを持たせているか」は、 単元の導入や授業の導入で生徒と共有すべき情報です。 「今回の単元はこういうことをしますよ」、「○○間配当で こういう学習活動をしますよ」 ということを生徒と共有することで 生徒の学習意欲を引き出すだけでなく、主体性を育むことが期待できます。我々大人でも同じです。この仕事は、どういう全体像をしているのか、 どこに仕事の山があるのか、だいたい何時間ぐらいかかる仕事量なのか、前もって分かっているのと分かっていないのとでは仕事に対するモチベーションに大きな違いがあります。 授業でも同じことがいえます。

1.3.2.2 学習活動

次に「話す聞くの場面を作っているか?」「挑戦させているか?」「試行錯誤させているか?」は、学習活動にあたります。 話す聞くの学習活動を行うためには、 自分の意見をまとめあげる学習活動が必要であり、 何についてまとめるかは、「問い」にかかっています。 挑戦させるためには、それに値する学習課題が必要です。試行錯誤させるためにも、それ相応の課題が必要です。学習活動のためには、それを行うにふさわしい「問い」が必要です。

1.3.2.3 ふりかえり

最後に、「発展的・系統的に指導しているか?」は、あるひとまとまりの学習の次の段階であったり、 関連する学習指導であったりします。そのためには、 今行った学習をきちんと意味づけ、 改めて捉え直す必要があります。いわゆる「リフレクション・学習のふりかえり」の段階です。 


1.3.3 単元の流れ

授業の中で活用させる資質能力の三つのパートを、 単元の流れとして授業の基本構造に対応させると次のようになります。



「目標を持っている。見通しを持っている」は「単元目標の共有・単元の見通しの共有」、「話したり、聴いたりしている」「挑戦している」「試行錯誤している」は、「学習活動」、「発展・系統的に学習している」は「学習のふりかえり」に対応することがわかります。この部分は、いわば「生徒が頑張るところ」です。

先程説明で、授業の基本構造は「問い」に対する「答え」だとお話しました。では、この「問い」「答え」はなにかと言うと「先生が頑張るところ」です。だから、生徒に身につけさせたい力は入ってこないのです。

整理すると、一つの単元は原則として

  1. 単元目標の共有
  2. 「問い」の提示
  3. 学習活動
  4. まとめ
  5. 学習のふりかえり
の流れになります。

その中で、生徒に頑張らせるところは、

1.単元目標の共有
3.学習活動
5.学習のふりかえり

です。


先生が頑張るところは

2.「問い」の提示
4.まとめ

です。

1.3.4 まとめ

まとめます。指導目標を達成するためには何が必要かという問いでした。

必要なのは授業の充実でした。

では授業はどのようにして充実させるかというと、基本構造をきちんとおさえるということでした。

基本構造の中の核は何か。

それは「問い」です。

各教科の指導目標を達成するためには、「問い」を研ぎ澄ますことがなにより重要なことになります。



【キャリア教育2】各教科の指導目標の立て方

 1.2 キャリア教育の視点を含み込んだ各教科の指導目標

前稿では、学校教育におけるキャリア教育とは、基礎的・汎用的能力を授業の中で意識的に活用させることと大きく定義づけました。

では次に基礎的・汎用的能力を活用させる授業について、各教科どのように指導目標を立てればよいかを考えていきたいと思います。

1.2.1 指導目標の考え方

指導目標の考え方について解説します。 指導目標については、「学習指導要領の各教科の目標」と、「沖縄県キャリア教育基本方針の、基礎的・汎用的能力と身につけさせたい力」とを連動させて考えると目標が立てやすくなります。


具体的に見ていきたいと思います。

まず国語ですが、新学習指導要領の国語科の目標は、

「言葉による見方・考え方を働かせ、言語活動を通して、国語で的確に理解し効果的に表現する資質・ 能力を次のとおり育成することを目指す。」

とされています。

一方、沖縄県キャリア教育基本方針の中で、「高校国語」は主に「かかわる力」が重要とされてり、それは基礎的汎用的能力の中の、 人間関係形成力、社会形成力とされています。下位項目を見てみると、 六つの力が示されています。その中から、特に国語と関わりの深いと思われる項目を選んでみます。学習活動は学習指導要領から、育成する資質能力は沖縄県キャリア教育基本方針の中から取り出します。組み合わせると次のようになります。

1.2.2 各教科の指導目標(案)

以下教科別に見ていきたいと思います。 引用する項目には下線を引いてありますので確認してください。









各教科まとめると下の表のようになります。 

ここまでのまとめです。

キャリア教育の視点を組み込んだ各教科の指導目標は、 学習指導要領の学習活動と、キャリア教育の育成したい資質能力を組み合わせて考えてみると立てやすくなります。

ここに示しているのは案ですので、 再度各教科で話し合って文言の修正を行ってください。 





【キャリア教育1】学校教育におけるキャリア教育とは何か

先生方、こんにちは。

今回は首里東高校で実施しました「キャリア教育職員研修」の内容について掲載します。研修は時間の制約があるため、お話しできなかった箇所もありますのでここに記しておきます。

はじめに

首里東高校はキャリア教育推進協力校の指定を受け、研究期間3年のうち2年が終了し今年度は最終年度となります。これまでの成果と課題を報告書からまとめますと、次のようになります。


学校としてカリキュラム・マネジメントのもと、どのような力を身につけさせるのかというコンセンサスを形成し、キャリア教育の視点を盛り込んだ授業を実施したことが成果としてあげられています。これは大きな成果だと思います。

課題としてあげられている項目のうち注目したのは「授業や行事を、身につけさせたい力とつなげる工夫」です。これは何を物語っているかというと、「身につけさせたい力をふまえキャリア教育の視点で授業を実施したが、身につけさせたい力が授業の中でどう結びついているのかいまいちはっきりとしない」ということだと思います。端的に言えば「授業をしていても、キャリア発達を促しているとは思えない」と先生方が感じているということです。これは各教科、指導目標の設定の段階でいまいち腑に落ちないまま次に進んでいったためだと思います。

そこで、本研修会の目的を「カリキュラム・マネジメントのもと、キャリア教育の視点で育成したい資質・能力と、各教科で育成したい資質・能力の関連をどう捉えたらよいか。」を考えることし、「授業改善の視点」と「取組の共通化と個別化」という二つの大きな項立てで行います。

Ⅰ 授業改善の視点


1.1 学校教育におけるキャリア教育とは何か?

1.1.1 不易と流行


21世紀は知識基盤社会だ、と言われはじめたのはもう10年も前のことで、今は予測困難な社会と形容されています。AIの発達による労働環境の変化やSociety5.0に代表されるように人とモノ、人と人との関わり方も変化していくと予想されています。

私たちを取り巻く環境は変化していきますが、そのような中でも私たちは共同体の中で人々と協力して生きていくという「人類の基本」は変わりません。そして協力して生きていくことの本質は「分業」です。共同体の中のそれぞれの「持ち分」を、私たちは「分業」してこの社会を成り立たせていいます。

問題は何を「分業」するかということです。これまで「生業」としてあったものが機械化やAI化により置き換えられ新たな「生業」が生まれてきます。産業革命で労働力としての馬や馬を扱う人や馬を養い育てる人は必要なくなりましたが、新たに機械技師や運転手という仕事が誕生しました。新しく生まれた「生業」に対応するため、新しいことを学び自分自身を更新していくことが必要となります。

新しいことに対応することはこれまでもありましたが、これまでと決定的に違うのは「変化のスピード」です。かつては、時代の変化のスピードが「三世代単位」であったものが、これからは自分の仕事人生のうちで何度となくアップデートを求められます。さらに大変なのが、これが小さなマイナーチェンジではなく、大幅なアップデートだということです。

先生方の中には、まさか自分が現役の間に動画によって授業を配信することになるなんてと思っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

これまでは、ある一つの知識・技能の習得は彼らの人生をある程度約束してくれるものでした。しかしこれからは違うと言われています。一つの知識・技能から次の知識・技能へと自己刷新して「学び続ける力」が必要ということです。

1.1.2 沖縄県キャリア教育の基本方針

令和元年度の沖縄県が定めた「キャリア教育の基本方針」の中に、キャリア教育の定義があります。

●キャリアとは
「人が生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ね」→共同体と分業

●キャリア教育とは
「社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達促す教育」

●キャリア発達とは
「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分ら生き方を実現していく過程」→学び続ける

「キャリア」と「キャリア発達」で言っていることは、「人は共同体の中で分業し協力して生きていき、変化に対処すべく新しいことを学び自分自身を作り直していかなければならない」ということです。

では「キャリア教育」とは何か。キャリア教育とは、学校の教育活動全体で基礎的・汎用的能力を育成していくことに他なりません。基礎的・汎用的能力とは「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」といった力のことです。

基礎的・汎用的能力を具体的な「身につけさせたい力」に言い換えると、下図のようになります。


1.1.3 首里東高校のキャリア教育指導計画

この章の最後に、基礎的・汎用的能力と、首里東高校のキャリア教育指導計画の関連性について考えてみたいと思います。

首里東高校の指導目標と手立ては次の通りです。

「自己を理解し、見通しを持って主体的に行動することができる生徒~思考ツールを活用した授業を通して~」

先生たちの願いを込めた生徒像は「授業」を通して育成していきたい、という熱い思いが伝わってきます。

また、育成したいキャリアの能力は「自己理解」と「課題対応能力」と焦点化しています。

さらに育成したい資質・能力は下の6つにまとめられています。

①人の意見を聴く(尊重する力)
②ルールを守る力
③やるべきことに気づく力
④計画的に行動する力
⑤失敗を恐れずに挑戦する力
⑥実行したことを継続する力

沖縄県キャリア教育の基本方針と関係づけると、下図のように整理できます。


(表左)首里東高校は学校の教育活動全体を通して、特に授業を通して身につけさせたいキャリアの力として「自己理解」と「課題対応能力」をあげています。それは「沖縄県キャリア教育の基本方針」では表のように「力」を具体化しています。

(表真ん中)「自己理解」「課題対応能力」を「育成したい資質・能力」と対応させると、表真ん中のようになります。

ここからが大事です。

先生方は生徒に「自己理解力」をつけたいと願っています。それは「人の意見を聴く」力であったり、「やるべきことに気づく力」であったり、「失敗を恐れずに挑戦する力」として具体化されています。そして、それをできれば「授業の中」で育成したいと考えています。

大事なことは、(表右)授業の中で「話す・聴く場面を作っているか?」「目標を持たせているか?」「挑戦させているか?」ということです。しかも、「組織的に」です。

「課題対応能力」については、「見通しを持たせているか?」「試行錯誤させているか?」「発展・系統的に指導しているか?」です。組織的に。

まず、各教科の授業作りに入る前に、学校全体として押さえておくべき点を確認しておきたいと思います。


まとめます。

学校教育におけるキャリア教育とは、基礎的・汎用的能力を授業の中で意識的に活用させる、ということです。

力は使わないと育ちません。